神戸学院大学心理学部広報誌 CoCo-Navi 創刊号
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2018年10月10日15時30分より、神戸学院大学有瀬キャンパス14号館において、心理学部学術講演会が開催されました。今回の講師は、大阪体育大学の土屋裕睦先生。「実力発揮のための心理学:メンタル・トレーニングの実際」をテーマに、グループワークを交えながらお話しいただきました。「あなたはメンタルが強い方ですか?と聞かれても、メンタルは目に見えませんね」はじめにメンタルを把握する“ものさし”として、心理的競技能力診断検査(トーヨーフィジカル社)が紹介された。この検査は、アスリートの一般的な心理的競技能力を12の内容(忍耐力、勝利意欲、リラックス能力、判断力、協調性など)に分けて診断することができ、統計的に信頼性・妥当性が立証されている。「例えば、勝利意欲は他者との競争を表すものなので、兄弟・姉妹関係や家庭環境も影響します。このように、自分のメンタルを客観的に把握することで自己理解を深めていきます」と現場での実例を上げ分かりやすく説明された。では、メンタルを強くするためにどのようなトレーニングをすれば良いのか?「メンタルトレーニングとは、実力発揮に役立つ心理スキル(技能)を学習(トレーニング)することです。具体的には、リラクゼーション、イメージトレーニングなど個人の課題に合わせて実施します」ここでは、イメージの種類について、一人称視点の内的イメージ、三人称視点の外的イメージを取り上げ、メンタルトレーニングの内容についてご紹介された。「アスリートのサポートは個人だけでなく、チームを対象に行うこともあり、その手法のひとつにチームビルディングがあります。それでは、実際に“ヘリウムリング”を体験してみましょうか」と学生が6人1チームになり、フラフープが渡された。「ルールは6人の人差し指にフラフープを乗せて、離れないように、床までフラフープを下げるだけです。一人でも指が離れるとやり直しです」実際にやってみると、全員がフラフープから指を離すまいとして、くっつける意識が高くなるのか、フラフープは下がるどころか、逆に上がっていた。その後、試行錯誤を繰り返す中で、リーダー役が現れ、せーの、という掛け声が出るなど、チーム内にルールのようなものが生まれた。そして、最終的に一体感が生まれフラフープを床まで下げることができた。「チームワークとは、集団の目標に向かって、各自が自分の役割を遂行することです。サポート現場では、このような体験を通じて、チームワークとは何かということについて考えてもらいます」チームワークの概念は、スポーツに関わらず、仕事など集団として活動する上で重要な示唆であった。「現在、“デュアル・キャリア”という新しい考え方に基づいたサポートをはじめています。デュアル・キャリアとは、“人としてのキャリア形成”と“アスリートとしてのキャリア形成”の両方を同時に取り組んでいく状態を指します」大阪体育大学では、アスリートとしての自分、コーチとしての自分を同時並行的に高め、引退後をセカンド・キャリアとして切り分けるのではなく、ひとりの人間として繋がるようなサポートが行われているそうだ。「サポート現場では、目標を設定するときに、競技上の目標だけでなく、人生全般の目標も考えてもらいます。そうすることで、競技に対するやる気を高めるだけでなく、競技に取り組むことが、人生における夢の実現に繋がるようにしてほしい」という言葉で講演を締められた。※「 」は土屋先生の発言講 師/大阪体育大学 土屋 裕睦先生アスリートのメンタルチームワークを高める2018年度心理学部競技者としての成功だけでなく、人としての成長を支援レポート実力発揮のための心理学:メンタル・トレーニングの実際術講演会

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